この世界には、二つの種族が暮らしている。\ 獣耳、翼、尻尾などを有する――『幻夷(まほろい)』。\ それらを持たない――『人間』。\ 二種族の共存が始まり、早数百年――\ \ 紅葉で栄える、山裾の地方都市『継椛実町(つぐもみちょう)』。\ 幻夷発祥の地と伝わるこの町で、笹浦清司は一人の少女と出会う。\ 「――やっと逢えた……!」\ \ それは、古来より幾度となく物語の中で紡がれてきた光景。\ \ 獣耳と尻尾――幻夷の少女は瞳を潤ませ、唇をほころばせる。\ 秘めた想いを伝えるかのように、頬を上気させ、精一杯の言葉を紡ぐ。\ 「えっと、えっと。わたしの……ううん、わたしは――」\ \ ――そう。\ これは由緒正しく、古式ゆかしい恋物語(ラブストーリー)――\ \ 「わたしは――――ご主人のペットだよっ♪」\ \ ではない!!\ \ 愛の告白――もとい、ペット宣言をした少女の正体。\ 彼女の存在によって揺るがされる、幻夷と人間の関係。\ ……よりもなによりも、自称ペット少女の襲来で激変する清司の周辺。\ \ これは共存の歴史に刻まれる、新たな一ページ。\ 共に栄える――共栄の物語。\ \ 幻夷の集う、この継椛実町で彼が向かう先は――