テロ事件、異能大戦、怪獣襲撃、宇宙人侵入……
こんな非日常の事件が一つも起きていない東京。今日もいつものように平和だ。
そして、俺は今日もこのありふれた日常を楽しみながらいつものように会社に通う。
毎日変わらない生活なんてつまらないと言う人もいるが、俺はそう思わない。
カラフルな生活は確かに憧れるが、面白さと穏やかさは対極の位置にあるものだ。
面白くて賑やかな日常を楽しみながら、穏やかな生活を過ごしたいだなんて、ちょっと張りすぎじゃないか。
後者を選んだ俺にとっては、誰でも邪魔されない日々が維持できるのはもう十分幸せだ。
もし誰かが俺の池に石でも投げてくるなら、その人は絶対頭がおかしいやつだ。
しかし——
「というわけで、この子たちのこと、よろしくね」
「はぁ?」
「ふつつかものですが、どうぞよろしくお願いします!」
「二人の美と同居できるお兄さんはきっといやらしい笑みを浮かべてるね」
「これをどう見えても苦笑いだぞ!?」
俺の池に投げられたのはもはや石ではない。それより数倍危険なブロックバスターだ。
に近い、ただそれだけの理由で俺の家に住み始めた二人の妹。しかしそれにはそれぞれの下心がある。
「お兄さん、三日月姉さんといつも百メートル以上の距離を保ってください」
「満月の方こそ!早く優陽兄さんのところから離れて!」
ああ……俺の日常はもうめちゃくちゃだ。
こうして、時々懐かしく、賑やかな日常の思いが入り混じっている俺と彼女らの同居生活は急に幕を開けた。